
出典元:プレジデントオンライン
44歳で扉をこじ開け、89歳でなお現役。
戸田奈津子さんの矜持に学ぶ、伝え切る力
“遅い”は他人が貼ったラベルだ
新しい挑戦に年齢の門限はない。
戸田奈津子さんが字幕翻訳の扉を叩いたのは44歳。
世間が「折り返し」と呼ぶ年齢に、本人はスタートを切った。
「私にはまだ右目がある」。
このひと言を聞いた瞬間、私は勝手に胸が熱くなった。
弱みを数える代わりに、使える資源を数える。
言い訳ではなく、残された一点に全神経を注ぐ。
その視線の鋭さに、言葉の職人としての誇りがにじむ。
右目で狙い撃つ—制約が精度を生む
引用に酔うのは簡単だが、ここで見たいのは意志の構造だ。
字幕は“足す仕事”ではない。
“削って残す仕事”だ。
限られた尺で、観客の心に芯だけを届ける。
だからこそ、視野を狭めるという制約が、むしろ焦点を研ぎ澄ます。
「右目がある」は、身体状況の報告ではない。
編集の宣言だ。
- 弱点の反転:
できない理由を切り落とし、できる一点を増幅する。
- 焦点の固定:
ぜんぶ伝えようとしない。核だけを残す。
- 責任の自覚:
受け手の時間と感情を預かる以上、言葉の無駄撃ちはしない。
“覚悟”と何度も言うのはやめよう。
ここで語るのは“精度”だ。
精度は、削ることでしか生まれない。
44歳のスタートは「遅さ」ではなく「熟度」だった
通訳として積み上げてきた現場感、
作品の温度を掴む嗅覚、文化を跨ぐ距離感。
それらは44歳だからこそ揃っていた。
だから遅くない。
成熟していた。
実際、私たちの日常でも同じだ。
新しい挑戦の前で迷ったら、これまでの時間が生んだ“手触り”を点検すればいい。
経験は錘になる。
言葉はそこに重みを得る。
- 手順の置き換え:
- 書く前に捨てる:
伝えたいことを10並べて、7捨てる。
- 比喩は1発だけ:
連射は鈍る。
- 主語を明確に:
誰が、何を、なぜ。曖昧さは読者に押しつけない。
この3つを回すだけで、文章は急に芯が立つ。
年齢ではなく、運用の問題だ。
その言葉は“あなたの狙い”で発射されているか
答えはこうだ。
多くの場合、私たちは勢いで書き、勢いで話している。
だから一度、問う。
狙いは何か?
誰のどの感情を動かすのか?
一文で言えるか?
言えるなら進め。
言えないなら止まれ。
止まる勇気が、質を上げる。
もう一歩踏み込む。
あなたが「伝わらない」と嘆いたその文章、的がボヤけていないか。
もし「全部大事」を抱えたままなら、それは狙いがズレている証拠だ。
捨てろ。
残せ。
射程を短くしろ。
それが、届く。
遅さは言い訳、焦点は技術
- 宣言:
使える一点に賭けろ。右目で狙い撃て。
- 設計:
核だけを残す。余白で語らせる。
- 実行:
書く前に捨てる。的を一つに絞る。
「もう遅い」は他人の都合だ。
「伝わらない」は自分の怠慢だ。
仕上げよう。
自分の言葉で、絞り込んで、届かせる。
ちゃんと。
コメント
コメントを投稿